認知症カフェに行ってみました

最近増えてきている『認知症カフェ』

どんなものかご存知ですか?

まだまだ認知度が低く、
その名称すら知らない人も多いようです。

“カフェ”ということは喫茶店みたいなところなのか、

頭に“認知症”と付くということは
認知症の人だけが集まるところなのか、

誰がどのように運営しているのか、
デイサービスとはどのように異なるのか、

私もよくわかりませんでした。

でも
認知症の母を介護している身としては
なんとなく気になります。

母にとって有益な所であれば利用してみたい.

ということで
私自身が「認知症カフェ」に行ってみることにしました。


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【そもそも認知症カフェとは?】

まずは事前の下調べ。

そもそも認知症カフェとは何なのか?
なんとなく“認知症”という言葉に引っかかってしまいます。

わかりやすいようにその名称らしいですが、
「オレンジカフェ」という呼び方もありました。

こちらの方が良い響きですが、
一般の人に内容が伝わりにくいのかもしれません。

認知症高齢者の増加が確実に見込まれる中

国は認知症対策として、
総合的に取り組む国家戦略を打ち出し、

2013年に「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を発表。

そして2015年度から実施したのは
「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」。

この「オレンジプラン」という言葉から
「認知症カフェ」を「オレンジカフェ」とも呼ぶのですね。

オレンジプランの目的は

認知症の人の意思が尊重され、
住み慣れた環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現
を目ざす」というもの。

認知症になったからと言って
すぐに施設や病院に入れるのではなく、

本人の意思を尊重して、
住み慣れた場所で自分らしく暮らせるようにする。

そのためには家族だけでなく、
地域全体での支え合いが必要になります。

オレンジプランでは次の7項目を柱と掲げています。

(1)認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進。

(2)認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供。

(3)若年性認知症施策の強化。

(4)認知症の人の介護者への支援。

(5)認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進。

(6)認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、
介護モデル等の研究開発およびその成果の普及の推進。

(7)認知症の人やその家族の視点の重視。

認知症への理解がまだまだですので、
このような社会の実現はかなり年数がかかりそうです。

しかし認知症は今や他人事ではないので、
普及・啓発がいっそう進むことを期待したいと思います。

【実際の認知症カフェはどんなところ?】

では、実際の認知症カフェはどんなところなのか、
まずは自分で体験してみる、ということで

県内にどれくらいあるのか、
住んでいる地域にはあるのか、

場所、時間帯、費用は?

調べてみると、
県庁所在地の仙台市には十数ケ所ありますが、

それ以外の地方には1ヶ所あるかないか。
名目上1ヶ所あるものの、運営されていない感じの所も。

できるだけ近くの認知症カフェの一つを
のぞいてみることにしました。

そこは生協の会議室を借りて開催している所でした。

飾り気のない狭い室内
中央のテーブルを囲んで10名ほどの人が座っています。

写真を撮るのは遠慮しましたが、これと似た感じです。

↓  (別の認知症カフェの様子)

参加費は、カフェによって異なりますが、
無料のところから200円という設定がほとんど。

他県には食事を提供するカフェもあり、
参加費は4~500円程度とか。

ここは一人100円でした。

目の前にお茶と少しのお菓子があり、
むいた果物が回されます。

進行役の人が上手に受け答えしながら、
順番に状況報告や思ったこと、新たな情報などを話していきます。

認知症の親を介護している人、

配偶者を介護している人、

自分自身が軽度認知症の人、

認知症の夫とその妻、

進行と適宜の補足をするのは2人の介護職らしい人。

みなさんいつものメンバーらしく慣れた感じで話をし、
和気あいあいとした雰囲気を保っています。



初参加の私にも順番が回ってきたので、
母が家にいるとき、何度も出たり入ったりを繰り返すこと、

表道路を進んで行って帰れなくなることが心配、
ということを話しました。

すると認知症の男性が
「それは自分でわかっているのだから大丈夫、帰ってきます。」
と発言。

私は少しハッとしました。

その人は認知症なのにちゃんと他人の話を理解し、
それについて考え、意見を述べるのです。

付き添っている奥さんが笑顔でうなずきます。

その人は本当にその意思を尊重されて、
自尊心をもって自分らしく暮らしているのだと思いました。

母に対する私の態度は、最初から“認知症だから”という観点。
本人の意思を度外視した接し方をしているのではないか。

住み慣れた場所で自分らしく暮らすことを、
むしろさせないようにしているのではないか。

ふと自分のやり方に疑問を感じました。

そして、ほかの人も励ましの言葉をかけてくれたあと、
介護職の人が的確なアドバイスをくれました。

私は安心感を覚え、アドバイスに納得しました。

お試しでのぞいてみるつもりが、
来てみて良かった、話してみて良かった、と素直に思いました。

最後にみんなで懐かしい歌を2曲歌ってお開き。

週一回2時間の認知症カフェでした。

【認知症カフェ 課題は多い】

認知症カフェは、

認知症患者とその家族だけでなく、
誰でも参加できて、

飲食しながら気軽に情報交換をし、
ゆっくりと自分なりの時間を過ごすことのできる場所。

ということですが、

現時点では、数の点でも運営方法の点でも、
認知度の低さの点でもまだ発展途上です。

参加した認知症カフェの責任者の方が話してたとおり、
今後の普及のためには多くの課題があるようです。

とくに大きな課題は資金難と人材不足。

まずは場所と資金。

介護施設や公共施設を利用しているところは大丈夫かもですが、
家賃の支払いが必要なところは運営が行き詰まってしまいます。

運営に必要なのはささやかなお茶菓子だけではないのです。
何しろ利用者の負担額が数百円では全く収入不足。

国や自治体のわずかな補助金・助成金では継続できません。

そして人材不足。

大半の認知症カフェの運営はボランティアに依存しています。
介護福祉の関係者だけでは賄いきれません。

ただでさえボランティアの数が足りないので
カフェを開く回数を増やすことは難しい状態。

さらに、
情報が共有化されていないことも課題です。

各認知症カフェがそれぞれのやり方で運営していて、
しかもそのほとんどが手探り状態という実情。

利用者が利用しやすく、かつ継続可能な運営法を構築し、
各認知症カフェの間で情報を共有することが必要でしょう。

このような課題の解決は一朝一夕にはできませんが、
地域全体の課題として取り組み、

認知症カフェをいっそう普及させることができるよう
願っています。