認知症の予防と治療に効果絶大の方法

認知症を予防する対策としては
「個人の生活習慣」「社会との関わり」という
2つの側面から考えることができます。

前ページでは、個人の生活習慣という側面から
「食生活」と「脳トレを含む運動」が重要であると述べました。

この基本原則は長期にわたる継続が必要であり、
効果があったとわかるのは高齢になってから。

若いうちはあまり実感がないので、
地道な努力がまだるっこしく感じるかもしれません。

もっと即効性があるもの、
効果を実感できるものはないのでしょうか?

あります!

認知症を予防するためのもうひとつの側面「社会との関わり」

社会との関わりとは、「他者との関わり」
つまり「他者とのコミュニケーション」が重要になってきます。

これは認知症になってからでも、
その効果が実証されていることです。

ですので
若いうちから基本原則と共に実行するなら
認知症予防に大いに役立ちますし、

認知症になってしまった人でも改善が見られたり、
進行を遅らせたりすることができるのです。

では
「社会との関わり」で認知症を予防する具体例と、
さらに、効果絶大な「音楽の力」について見ていきましょう。



【社会との関わり】

人は一人では生きてゆけません。
誰でも社会の一員として生きているのです。

なのに高齢者になるとだんだんと社会から疎外され、孤独になります。

孤独は認知症を引き起こし、症状を進行させます。

そのメカニズムはこうです。

高齢になって家に閉じこもると会話する機会が減る。

→1人暮らしになるとさらに会話は激減する。
高齢男性の6人に1人が、他の人との会話は2週間に1回。

→孤独になると、自己制御機能が低下する。
暴飲暴食、運動不足、過剰睡眠など規律のない生活になりがち。

→自己嫌悪から他人に会いたくなくなる。孤独を深める。

→心身ともに負担がかかり、細胞が傷つき脳にも悪影響を及ぼす。

→認知症が進行

このような状態から抜け出すのはなかなか難しい。
近隣住民や福祉担当員の積極的な支援が必要です。

一方で
孤独にならずに社会との関わりを持っている人は
認知症になりにくいという調査結果が出ています

趣味の活動に打ち込む人もいますが、
高齢者の半数以上の人が社会の役に立ちたいと思っており、

町内会活動や社会福祉活動、自然・環境保護活動などに
関わりたいと考えているのです。

 

お年寄り2

 

実際にそのような活動に参加している人は友人も多く、
認知症を発症するリスクが70%も低いという報告もあります。

認知症患者でも、社会活動に参加することにより
症状が大きく改善された例があります。

農家だったある認知症患者は農業に関する知識が非常に豊富だった。

施設では毎日外を眺めてぼんやり過ごしていた。

ある日、野菜がうまく実らなくて困っている人の農場へ行く。

思ってもいないようなアドバイスをした。

試しに行なった場所の野菜は非常に良い実りとなった。

農場とアドバイザー契約を結んだその人は、
喜んで活動することにより認知症が改善した。

このように
社会との関わりは認知症の予防に大きな意義を持つのです。

まだ若いと思っている人でも
今現在社会との関わりがうすいと感じているのであれば

今のうちから何らかの社会参加を考えてみるのはどうでしょうか?



では、身体が弱っていて
外での活動が無理な人にはどんな方法があるでしょうか?

重要なのは“他者とのコミュニケーション”

「回想法」という認知症の治療に使われる手法があります。

なつかしいものに触れて、昔の記憶を呼び起こすというもの。

テーマは昔のことなら何でもOK

なつかしい昔の駄菓子
得意な料理、好きな料理
昔憧れた俳優や歌手
好きだった歌・映画・TV番組
有名なお花の名所
思い出の旅行
正月・お盆・クリスマスなどの行事

テーマにそって会話することで昔の記憶が呼び起こされ
脳が活性化します。

認知症になっても昔のことは覚えていたりして
思いのほか話がはずみます。

これと似た手法が「共想法」

回想法と同じくテーマを決めて少人数で会話します。
写真など持ち寄れば視覚に訴えるのでより効果的。

目・耳・口の感覚器官を同時に働かせるので、
当然脳は活性化されます。

回想法や共想法は、
介護施設などでプログラム化されていますが、

家族でやるのも効果的です。

親や祖父母がイキイキと昔の話をする姿を見れるかも。

積極的に耳を傾け会話しましょう。

【効果絶大な音楽の力】

音楽が嫌いな人はいませんね。

そして、音楽には力があることを多くの人は認めています。

音楽は「認知症の特効薬」にもなりうるのです。

映画『パーソナル・ソング』は、
認知症患者への音楽療法を扱っています。

ある認知症患者が、自分の娘の名前すら忘れてるのに、

昔懐かしの音楽を聴いたとたん、
若いころの記憶を取り戻し全身で喜びを表現したことをきっかけに、

その人にとっての思い出の一曲を聴かせて
認知症の人々を目覚めさせる、という内容は感動的。

映画紹介で述べているように、
音楽はもっとも脳の広い領域を刺激するのです。

薬では認知症患者の“心”は治療できません

人それぞれの“パーソナル・ソング”があり、
その音楽によって患者は自分を取り戻すことができるのです。

私たち自身、今でも
大好きな音楽を聴くと気持ちが高揚しますね。

認知症高齢者にも大好きだった音楽があるはずです。

どんなジャンルかわかりませんが、

認知症になった家族のパーソナルソングを見つけて
聴かせてみましょう。

家庭内での、認知症の予防と治療に
音楽の力を活用してみませんか?

家族で“カラオケ”というのも楽しそうです。